キャリア設計
0章|高専生が一番やってはいけないこと

――それは「何も決めない」ことだ
高専に入学したとき、多くの人が心のどこかでこう思っている。
「そのうち就職先は決まるだろう」
「高専生なんだから、なんとかなるはずだ」
「今はまだ1年生だし、考えるのは先でいい」
将来のことまで考えなくても、
少なくとも就職先くらいは、いつか自然に決まってくれる。
そう思ってはいないだろうか。
だが、はっきり言う。
就職先は、勝手には決まらない。
そしてもっと危険なのは、
勝手に決まってしまう就職先ほど、リスクが高いという事実だ。
高専は「決めなくても進めてしまう」場所だ
高専という環境は特殊だ。
- 推薦制度がある
- 求人が多い
- 周囲も同じ進路感覚を持っている
その結果、
自分で深く考えなくても、前に進めてしまう構造になっている。
1年生のときは基礎科目中心で、
「今は勉強だけしていればいい」と言われる。
2年生になると実験や実習が増え、
課題をこなすだけで手一杯になる。
3年生になると専門科目が本格化し、
「ついていくこと」が最優先になる。
4年生になれば研究室や進路の話が出てくるが、
その時点で初めて考え始める人も多い。
そして気づいたら、
「選ばなかった」のではなく
「何も決めないまま、流れで選ばされている」。
これが、高専で最も起こりやすい失敗だ。
「何も決めない」は、実は選択だ
ここで重要なことを言う。
「何も決めていない」という状態は、
中立でも保留でもない。
それは、
- 周囲の意見に流される
- 制度に身を委ねる
- その場で一番楽な選択を取る
という選択を、すでにしている状態だ。
つまり、
決めないこと自体が、一つの決断になっている。
しかもこの決断は、
自分の価値観や人生設計とは無関係に進んでいく。
1年生で何もしなかったからといって、詰みではない
ここで誤解してほしくない。
1年生で何も考えていなかったからといって、
人生が詰んでいるわけではない。
むしろ、
1年生の段階から人生設計まで考えて行動できている人は、
正直かなり強い。
だがそれは同時に、
今からでも考え始めれば、まだ十分に間に合うということでもある。
問題は、
「まだ早い」「そのうち考える」と言い続けて、
考えない状態を当たり前にしてしまうことだ。
向いていない分野は「見切る」のではなく「仮決め」する
高専生にありがちなのが、
「向いてない」と早々に判断してしまうことだ。
確かに、向き不向きはある。
努力しても伸びにくい分野は存在する。
だが、多くの場合それは、
- 情報が足りない
- 比較軸が少ない
- まだ基礎段階に過ぎない
状態で下された、早すぎる結論だ。
本当に必要なのは、
「これは違う」と切り捨てることではなく、
- 今の時点では合わなさそう
- もう少し別の方向も試してみる
という仮の方向性を決めることだ。
方向性を仮決めするだけで、
学び方も、聞く相手も、集める情報も変わる。
高専には「やらせてもらえる環境」が揃っている
高専の強みは、
制度でも設備でもなく、環境だ。
- 先生との距離が近い
- 研究室に早くから出入りできる
- 先輩とつながれる
- 外部に出るチャンスもある
ただし、これは待っていても与えられない。
基礎を身につけ、
自分なりに方向性を持ち、
能動的に動いた人間にだけ、環境は応えてくれる。
逆に言えば、
何も決めず、何も聞かず、何も動かなければ、
どんなに恵まれた環境でも意味をなさない。
高専生活は、想像以上に早く終わる
「まだ1年ある」
「まだ時間はある」
そう思っているうちに、
高専の5年間は驚くほど早く過ぎていく。
何も考えずに過ごせば、
選択肢は自然に狭まっていく。
逆に、
雑でもいいから考え、言葉にし、
仮でもいいから方向を決めていれば、
選択肢はむしろ増えていく。
このシリーズで伝えたいこと
この先の章で繰り返し伝えるのは、たった一つだ。
高専生活で一番やってはいけないことは、
「何も決めない」ことだ。
完璧な人生設計はいらない。
最初から正解を出す必要もない。
だが、
- 自分はどう生きたいのか
- そのために、今どこに向かうのか
これだけは、
仮でもいいから決めてほしい。
決めることで、考えられる。
考えることで、修正できる。
この文章が、
「考え始める決断」をするきっかけになれば、それでいい。
ここから先は、
そのための話をしていく。





