キャリア設計
4章|具体例で考える:研究室選びとインターン

研究室選びとインターンは、就職や進学の前に自分の判断基準を作る人生設計の練習台だ。
“なんとなく”で決める癖を直し、紙に書いて整理しながら選ぶ型を身につけよう。
研究室選びとインターンは「人生設計の練習台」
研究室配属とインターン参加は、多くの高専生にとって「4年生になったからやるもの」「周りが動き出したからやるもの」という位置づけになりがちだ。実際、周囲を見渡せば、友人が研究室を決め始め、インターンの募集情報が回ってくる。そこで、「そろそろ自分も動かないといけないのかな」と感じる人がほとんどだろう。
しかし本質的には、この二つは単なる通過イベントではない。就職や進学の直前に、自分の意思で比較的自由に選べる数少ない意思決定の場であり、しかも失敗しても致命傷になりにくい。だからこそ重要なのだ。
ここでどう考え、どう決めたかは、その後の就職活動や進学、さらには社会に出てからの転職やキャリア選択の場面でも、ほぼ同じ形で再現される。例えば、「よく分からないけど勧められたから選ぶ」「深く考えるのが面倒だから無難そうな方に寄せる」といった判断の癖は、そのまま企業選びや配属希望にも現れる。
言い換えれば、研究室選びとインターンは「人生設計の練習台」だ。ここで流れに任せて決める癖がつくか、自分の頭で考えて決める型が身につくか。この違いは、数年後に振り返ったとき、想像以上に大きな差となって表れる。
研究室選びでやりがちな失敗
研究室選びの場面では、「空いているかどうか」「倍率が低いか」「先生が優しそうか」「忙しくなさそうか」といった基準が前に出やすい。これらは決して間違った視点ではないが、それだけで決めてしまうと、研究活動を単なるタスクとして消化してしまいがちになる。
たとえば、テーマに興味が持てないまま配属され、与えられた実験をこなすだけの日々を過ごすケースだ。レポートは書くが、自分なりの仮説や問題意識は生まれない。「何のためにこの実験をしているのか」と聞かれても、うまく答えられない。
それでも卒業はできるし、単位も取れる。しかし、その時間は自分の将来とほとんど接続されないまま過ぎていく。その結果、「研究室は楽だったが、何も残らなかった」「就職活動で研究の話を振られると詰まる」といった違和感につながることが多い。
研究室を「将来への接続」で考える
研究室を選ぶ際に、本来見るべきなのは「今をどれだけ楽に過ごせるか」ではない。その研究を通じて、どんな力が身につくのか、どんな考え方が鍛えられるのかだ。
たとえば、実験が多く地道な作業が中心の研究室では、仮説を立て、失敗し、条件を変えて再挑戦する力が身につく。これは開発職や研究職だけでなく、現場改善や営業企画などでもそのまま使われる力だ。
一方で、理論寄り・解析寄りの研究室では、現象を抽象化し、数式やモデルで説明する力が鍛えられる。これはシステム設計やソフトウェア、データ分析といった分野で強く生きる。
テーマそのものに強い興味がなくても、「この研究室を通じて何ができるようになるか」を具体的に想像できるなら、その研究室は十分に意味を持つ。研究室を「今の居場所」ではなく、「次につながる通過点」として見る視点を持つことで、選び方は大きく変わる。
研究室選びにおける上策・中策・下策の設計
理想の研究室に必ず入れるとは限らない。人気研究室であれば倍率が高く、希望通りにならないことも普通に起こる。だからこそ、第一希望だけでなく、中策・下策まで含めて考えておく必要がある。
例えば、第一希望はテーマも将来との接続も理想的な研究室。中策はテーマへの興味は薄いが、実験量や研究スタイルから身につく力は評価できる研究室。下策は、最低限の条件だけは満たし、自分が耐えられる研究室、といった形で整理する。
ここで重要なのは、「どこまでなら納得して進めるか」を事前に言葉にしておくことだ。そうしておけば、希望が通らなかったときにも「失敗した」「終わった」と感情的になりすぎず、現実的な判断ができる。
失敗を想定することは逃げや弱さではない。むしろ、人生設計としてはごく自然で現実的な考え方だ。
インターンが本来持っている役割
インターンというと、「内定につながるか」「実績になるか」という点ばかりが注目されがちだ。しかし本来の役割は、業界や企業、働き方が自分に合うかどうかを確かめることにある。
実際にその場に身を置いてみると、説明会では見えなかった部分が次々と見えてくる。仕事の進め方が想像以上に個人任せだったり、逆に常にチームで調整が必要だったりする。スピード感が合わないと感じる人もいれば、裁量の大きさにプレッシャーを感じる人もいる。
こうした感覚は、体験して初めて分かるものだ。インターンは「選ばれる場」ではなく、「自分が選ぶための材料を集める場」だと捉え直してほしい。
インターン選びで起きがちな失敗
インターン選びでも、研究室と同じ構造の失敗が起きやすい。有名だから、受かりやすそうだから、とりあえず経験になるから。こうした理由で参加すると、「インターンに行った」という事実だけが残り、判断材料がほとんど増えない。
その結果、「何となく合わなかった」「思っていたのと違った」という曖昧な感想だけが残る。なぜ合わなかったのか、どこが違ったのかを言語化できないため、次のインターンや企業選びにも活かせない。
インターンを人生設計の中でどう位置づけるか
インターンに行く前に考えておきたいのは、「ここで何を確かめたいのか」という一点だ。
この業界の働き方は自分に合うのか。チームで進める仕事が多いのか、個人で完結する仕事が多いのか。スピード感や責任の重さはどの程度か。自分はどんな場面で疲れ、どんな瞬間にやりがいを感じるのか。
こうした問いを持って参加すれば、たとえ合わないと感じたインターンであっても、それは失敗ではなく、次の判断を助ける重要な材料になる。
実体験から学ぶ、判断基準を持たなかった結果
過去の筆者は、インターン先が合わなかった理由を環境や他人のせいにしていた。しかし振り返ると、そもそも選ぶ段階で何も考えていなかった。
どんな点を確かめたくて参加したのか。合わなかった場合にどう判断するつもりだったのか。そうした基準を持たないまま参加した結果、得られたものも曖昧だった。
選んだのは筆者自身だった。その事実に向き合わなければ、同じ失敗は形を変えて何度でも繰り返される。
紙に書き出して整理しながら決めるということ
研究室やインターンのような複雑な判断を、頭の中だけで整理するのは難しい。情報と感情が混ざり合い、最終的には「もういいや」という結論に逃げてしまいがちだ。
だからこそ、紙に書き出して考えてほしい。人生のゴール、今大事にしたいこと、不安な点、上策・中策・下策。それらを一度すべて外に出してみる。
きれいにまとめる必要はない。矛盾していてもいいし、途中で考えが変わってもいい。重要なのは、自分が何を大事にし、何を怖がっているのかを自分自身が把握することだ。
考えるとは、悩み続けることではない。書き出し、整理し、自分なりに納得できる理由を持って選ぶことだ。
大切なのは、研究室選び、インターンなどの決断を「なんとなく」で終わらせないということだ。これらは、自分の人生をどう設計するかを、比較的安全に試せる貴重な機会である。





