キャリア設計

6章|企業選びで絶対にやってはいけないこと

更新日 2026-01-21著者 YoshihikoSato
6章|企業選びで絶対にやってはいけないこと
  1. 「受かりに行く就活」が一番危険
  2. 早期内定は選択肢を広げるためのカード
  3. 「大企業・安定・ホワイト」という言葉に思考停止するな
  4. インターン・説明会で見てはいけないポイント
  5. 逆に、必ず見るべきポイント
  6. 比較せずに企業を選ぶな
  7. 大学生はどんな就活をしているのか
  8. 高専生との決定的な違いは「視野」ではなく「プロセス」
  9. 高専就活の「セオリー」が視野を狭めている
  10. 比較しないまま決めることの危うさ
  11. 重要なのは「同じことをやれ」ではない
  12. 面接は「相互確認の場」
  13. 設計せずに決めた結果
  14. 推薦は賢く使え

高専の「推薦」は非常に強力で便利な制度だが、何も考えずに使うのは危険でもある。推薦を使えば、企業研究や比較を十分にしないまま、進路が一気に決まってしまうことがある。

問題は、推薦そのものではない。考える前に使ってしまうことだ。この章で扱う「企業選びの落とし穴」は、ほとんどがここから始まる。

「受かりに行く就活」が一番危険

高専生の就職活動は、表面的にはかなり恵まれている。求人は多く、学校推薦を使えば、大企業にも比較的スムーズに入れてしまう。ここで勘違いしやすいのが、「選択肢が多い」という錯覚だ。

実態は逆で、高専生は自分で探さなくても企業が用意されてしまう。その結果、業界を横断して調べたり、「そもそも世の中にどんな仕事があるのか」を知る前に、選択が終わってしまうことが多い。

推薦で行ける企業の中から選ぶ。先生に勧められた企業を受ける。気づけば、判断材料は最初からかなり限定されている。その視野の狭さこそが、一番危うい。

この状況で「受かること」を目的にすると、さらに事態は悪化する。企業に合わせて志望動機を作り、自分の価値観を都合よく書き換え、面接では“それっぽい学生”を演じる。内定は取れるかもしれないが、その企業が自分の人生に合っているかは、ほとんど検証されないままだ。

早期内定は選択肢を広げるためのカード

早期内定が出ると、「もう将来は大丈夫だ」「ここで終わりにしていい」という空気が生まれやすい。周囲からも「もう決まったなら楽でいいじゃん」「あとは卒業するだけだね」と言われ、疑問を持つこと自体が悪いことのように感じてしまう。

しかし、本来の早期内定の意味はまったく違う。一つ内定があるということは、新卒として社会に出る最低限の将来が確保された状態を意味する。

具体的には、来年から働く場所があり、毎月給料が出て、社会保険に入り、職歴として一歩目を踏み出せるということだ。これは決して小さな価値ではない。生活が成立するという安心感は、精神的な余裕を大きく広げる。

問題は、その余裕をどう使うかだ。

多くの高専生は、その余裕を「もう考えなくていい理由」に使ってしまう。「内定があるのに、他を見たら失礼ではないか」「今さら迷うのは格好悪い」という感情が、思考を止める。

だが冷静に考えてほしい。企業側は複数の内定を出し、その中から入社する人を待っている。学生だけが一社に縛られる理由はない。

本来、早期内定とは比較のためのカードだ。内定がある状態で、他の企業の説明会に行く。他業界の話を聞く。別の働き方を知る。その上で「やはり最初の会社が一番合っている」と判断できるなら、それは初めて納得のいく選択になる。

高専の就活は推薦応募前提で、4月から動き出す人が多い。一方、インターンに行っていた学生は、その前段階で早期選考に乗り、すでに内定を持っていることも珍しくない。ここで動き出しの差が、選択肢の差になる。

ただし、出遅れたからといってやけになる必要はない。「もう遅いから適当に決めよう」という判断こそ、一番取り返しがつかない。重要なのは、どのタイミングであっても、考えることをやめないことだ。

「大企業・安定・ホワイト」という言葉に思考停止するな

「大企業だから安定」「ホワイトだから安心」という言葉は、高専生にとって非常に強い誘惑になる。親や先生からも肯定されやすく、自分でも納得しやすいからだ。

だが、実態はかなり違う。

まず、思った部署に行けないことは珍しくない。研究職や技術開発職を希望して入社したのに、管理部門に配属されるケースは普通にある。配属は個人の希望よりも、会社全体の人員計画が優先される。

また、いわゆるホワイト企業では、残業に厳しい制限がある。その結果、一日でできる仕事量が決まってしまい、「もっとやりたい」「早く成長したい」と思っても、強制的にブレーキがかかることがある。これは良し悪しではなく、自分の成長スピードと合うかどうかの問題だ。

給料についても誤解が多い。大企業であっても、人事評価はスローで、20代のうちは横並びが基本だ。成果を出しても、昇給や昇進に反映されるまで数年かかることも多い。

さらに、社内政治の要素は無視できない。どの部署に属しているか、誰の下につくか、どのタイミングで異動するか。これらは実力だけでは決まらない。自分の力とは別のところでキャリアが左右される現実がある。

こうした構造を理解したうえで、それでもその企業が自分の人生に合っているかを考えなければならない。

インターン・説明会で見てはいけないポイント

インターンや説明会では、仕事の面白い部分だけが切り取られて見せられる。

だが、その業務を本当に一年目から任されるのか、という視点は欠かせない。部署の人数が少なければ、新人は基本的に配属されない。大企業では、希望の部署に一生行けない可能性もある。

別部署に飛ばされる可能性、その仕事が最初からできるのか。そうした現実を想像せずに決めると、入社後のギャップは大きくなる。

逆に、必ず見るべきポイント

企業トップのメッセージや中期経営計画は、その企業がどこを目指しているのかを最も端的に示している。どの事業を伸ばそうとしているのか、どの市場を見ているのか、将来どんな企業像を描いているのか。

しかし、資料を読むだけでは不十分だ。本当に重要なのは、そのビジョンが現場にどこまで浸透しているかである。

そこで見るべきなのが、社員やインターン生だ。その人たちがどんな将来像を描いてこの会社にいるのか。なぜ数ある企業の中からここを選んだのか。インターンに集まっている学生は、どんな価値観を持っているのか。

可能であれば、インターン生、社員と積極的に話してほしい。雑談の中に、その企業の本質が表れることは多い。その人たちと一緒に働く自分を、具体的に想像できるかどうか。ここは、待遇以上に重要な判断材料になる。

比較せずに企業を選ぶな

「もう十分調べた」「この会社で間違いない」と感じたとしても、本当にそうだろうか。

日本中の企業や業種を、自分の将来像と一つひとつ照らし合わせた人はほとんどいないはずだ。業界を一つ知っただけで、判断を終えてしまっていないか。

もちろん、相当な準備を重ね、将来像が明確で、「この企業以外ありえない」と言える人もいる。その場合は、早期に決断するのも一つの戦略だ。

だが、そこまで言い切れないのであれば、早期内定時点で決め切るのは早すぎる。比較しない選択は、情報不足による賭けに近い。

大学生はどんな就活をしているのか

ここで一度、高専生の就活から少し外に目を向けてみたい。

同年代の大学生、とくに上位大学の学生たちは、どんな形で就職活動を進めているのか。

これは「大学生の方が偉い」「高専生は劣っている」という話ではない。

情報の取り方と、意思決定までのプロセスがどう違うのかを見るための比較だ。

阪大生Aさんのケース

阪大の理工系研究室に所属するAさんは、次のような動きをしていた。

  • 研究室OBが在籍する大手製造メーカーへOB訪問
  • 技術職に限定せず、文系就職も視野に入れ戦略コンサルティングファームのインターンに参加
  • ベンチャー企業での長期インターンシップに参加し、事業開発を経験
  • 研究室経由で、企業と連携した共同研究案件に従事

注目すべきなのは、「最初から進路を一つに決めていない」点だ。

技術職・コンサル・ベンチャーという一見バラバラな選択肢を並べているが、Aさん本人の中では一貫している。

  • 自分はどんな環境で成長しやすいのか
  • 自身の専門性をどう社会に活かしていけそうか
  • 研究室での経験は、どこまで通用しそうか

これらを比較しながら検証するために、複数の場に身を置いている。

東大生Iさんのケース

一方、東大生Iさんのケースはこうだ。

近年のエネルギー資源不足・地政学リスクに関心を持ち、エネルギー事業に興味を持つ

  • エネルギー事業を扱う商社へOB・OG訪問を実施
  • 総合コンサルティングファームのインターンに参加し、仮説整理力・構造化思考を鍛える
  • 大手電力会社・ガス会社など8社から内定

Iさんも、最初から「この会社に行く」と決めていたわけではない。

社会課題 → 業界 → 企業 → 自分の適性、という順で思考を組み立てている。

特に重要なのは、

「仮説を持って動き、動いた結果で仮説を更新している」点だ。

インターンは内定獲得の手段ではなく、

「自分の考えは現実で通用するか」を確かめる場として使われている。

高専生との決定的な違いは「視野」ではなく「プロセス」

ここまで読んで、

「大学生は環境がいいからできる」と感じた人もいるかもしれない。

だが、本質的な違いは環境ではない。

進路を決めるまでのプロセスの差だ。

  • 最初から一社に絞らない
  • 比較する前提で動く
  • OB・OG・社会人に積極的に話を聞く
  • インターンを“選考”ではなく“検証”として使う

これらは、高専生でも十分に真似できる。

高専就活の「セオリー」が視野を狭めている

高専の就活には、暗黙のセオリーがある。

  • 推薦で一社ずつ受ける
  • 内定が出たら基本的に終わり
  • 4月以降に動き出す


この仕組み自体が悪いわけではない。

問題は、そのセオリーしか存在しないと思い込んでしまうことだ。

実際には、

  • インターン経由の早期選考
  • 一般応募での複数社受験
  • 業界をまたいだ比較

といった道筋も存在する。

インターンに行っている高専生の中には、

4年生になる前にすでに内定を持っている人もいる。

比較しないまま決めることの危うさ

大学生の事例から見えてくるのは、

「決める前に、十分な比較をしている」という点だ。

一方で、高専生は

  • 推薦で出せる企業の中から選ぶ
  • 先生に勧められた企業を受ける
  • 内定が出たら終わりにする

という流れに乗りやすい。

これは楽だ。

だが、比較していない選択は、納得が弱い。

納得が弱い選択は、入社後に違和感として必ず表に出る。

重要なのは「同じことをやれ」ではない

ここで伝えたいのは、

「阪大生や東大生と同じ就活をしろ」という話ではない。

重要なのは、

  • 自分は何を確かめるために動くのか
  • なぜこの企業を選ぼうとしているのか
  • 他の選択肢と比べたうえで、どう違うのか

これを自分の言葉で説明できる状態で決めているかどうかだ。

高専生であっても、

このプロセスを踏めている人は、進路の納得度がまったく違う。

面接は「相互確認の場」

多くの高専生にとって、面接は緊張するし、得意なものでもない。

問題は、面接を「受かるか落ちるか」だけの場として捉えてしまうことだ。その瞬間、企業を見極めるという視点が完全に抜け落ちる。

面接官と話せる時間は、せいぜい10分から20分程度だ。その短い時間で相手の人格や価値観を完全に理解できるはずがない。人事であれば、なおさら悪いことは言わない。

だからこそ、質問が重要になる。個人の感想を引き出す質問ではなく、事業の将来性、市場の見方、横展開の可能性など、企業のビジネスの軸に触れる質問をする。その答えが、自分の将来像とどう重なるのかを考えながら聞く。

面接は評価される場であると同時に、自分が納得できるかを確認する場でもある。

設計せずに決めた結果

筆者自身、将来像を描かないまま就活を行い、企業選びを進めてしまった。どんな情報を集めるべきかも分からず、目についた条件や雰囲気に引っ張られ、受かるための就活をした。

面接では、「この会社に合いそうな自分」を演じ、企業側が喜びそうな受け答えを優先した。その結果、内定は得られたが、自分の人生設計とのすり合わせはほとんど行われていなかった。

入社後に感じた違和感は、突然生まれたものではない。設計せず、考えずに決めたことの結果が、時間を置いて表面化しただけだった。

推薦は賢く使え

高専の「推薦」は非常に便利な制度だ。使えば、比較的スムーズに内定にたどり着ける。その反面、人生の大きな判断を、思考を止めたまま一気に決めてしまう危険性も孕んでいる。

推薦を使うこと自体が悪いわけではない。問題は、それが本当に自分にとって最善の選択なのかを考えないまま使ってしまうことだ。

推薦は、考える時間を短縮するための制度ではない。むしろ、考え抜いた末に使うべきカードである。企業を比べ、自分の将来像と照らし合わせ、それでもここだと納得できたときに初めて、推薦は力を発揮する。

自分の人生をどの環境に預けるのか。その判断を、便利さや空気に流されず、自分の頭で下せるようになること。それができるようにならないと、推薦の安易な使用は危険かもしれない。

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