キャリア設計

第1章|1年生から持つべき意識

更新日 2026-01-21著者 YoshihikoSato
第1章|1年生から持つべき意識
  1. 「1年生はまだ何もしなくていい」と思っていないか
  2. 差がつくのは「何をしたか」ではなく「考え始めたかどうか」
  3. 1年生で身につけるべきは「基礎」と「余力」
  4. 高専は「能動的な学生」にだけ異常に優しい
  5. 今やるべきは「人生を決めること」ではない
  6. 「まだ早い」は、思考停止の言い訳になる
  7. 1年の終わりに問うべきたった一つのこと
  8. ここから実際に「人生設計」を始めるための補足
  9. 人生設計は「頭の中」ではなく「外に出す」
  10. 「決める」とは、固定することではない
  11. 1年生の終わりまでに、次の3つだけはやってほしい。

1年生で何もしていなかったこと自体は致命傷ではない。

だが、考え始めなかったことは、その後の5年間すべてに影響する。

「1年生はまだ何もしなくていい」と思っていないか

高専に入学したばかりの頃、多くの人がこう考える。

  • まだ1年生だし
  • 専門も始まっていないし
  • とりあえず授業についていけばいい

この感覚自体は自然だし、責められるものではない。

中学までとは違う環境、難易度の高い授業、新しい人間関係。まずは慣れることで精一杯になるのは当然だ。

ただし、ここで一つだけ、はっきりさせておきたい事実がある。

1年生の時間は、想像以上に価値が高い。

それは「楽だから」でも「暇だから」でもない。

この時期だけが、将来について考えるための時間と頭の余力を、まだ十分に持てる時期だからだ。

差がつくのは「何をしたか」ではなく「考え始めたかどうか」

1年生の時点で、明確な成果を出している必要はない。

研究も、資格も、インターンも、この段階では必須ではない。

重要なのは、

  • 自分は何に興味があるのか
  • どんな分野に少し惹かれるのか
  • 将来どんな働き方をしたいか

こうした問いを、一度でも自分に投げたかどうかだ。

この問いを持ったまま授業を受ける人と、何も考えずに単位だけを追う人とでは、同じ内容を学んでいても吸収のされ方がまったく違う。

例えば、電気系の基礎科目を学んでいるとしよう。

「将来はインフラ系、電力会社に行きたいかもしれない」と思いながら学ぶ人は、発電や送電の話に自然と引っかかりを持つ。「この計算って、実際の現場ではどう使われるんだろう」と考えながら授業を聞く。

一方で、何も考えずに授業を受けている人は、テストに出るかどうかだけが判断基準になる。同じ公式を覚えても、使い道のイメージがないため、学んだ内容はテストが終われば抜けていく。

これは能力の差ではない。目的意識の有無による差だ。

1年生から動いている人間は、正直かなり強い。だが、だからといって今からでは遅いわけではない。今この瞬間に考え始めた人は、まだ十分に取り返せる。

1年生で身につけるべきは「基礎」と「余力」

1年生で一番大事なのは、派手な実績ではない。

  • 数学・物理・基礎科目を疎かにしないこと
  • 課題を期限内に出す習慣を身につけること
  • 分からないことを分からないままにしないこと

これらは地味だが、後から必ず効いてくる。

基礎が身についていると、専門科目が始まったときに理解が早い。質問の質も変わる。何より「分からないから避ける」「難しそうだから触らない」という選択をしなくて済む。

ここで言う「余力」とは、時間や体力だけの話ではない。

  • 新しい話を聞いたときに拒否反応を起こさない
  • 分からなくても一度考えてみようと思える
  • 忙しい中でも、少し立ち止まって考えられる

こうした思考と行動の余裕のことだ。

この余力がない状態では、目の前の課題をこなすだけで精一杯になり、将来について考えるどころではなくなる。

高専は「能動的な学生」にだけ異常に優しい

高専は、受け身でいれば最低限のことしか起きない環境だ。授業を受け、単位を取り、卒業することはできる。

一方で、

  • 先生に相談する
  • 先輩に話を聞く
  • 興味のある分野に自分から首を突っ込む

こうした行動を取る学生には、驚くほど多くの機会が回ってくる。

研究の手伝い、コンテスト、外部活動、企業や大学とのつながり。これらは「優秀だから」与えられるのではない。声を上げた人間にだけ見える世界だ。

基礎を押さえ、最低限の余力を持った上で能動的に動けば、高専は想像以上に自由度の高い環境になる。

今やるべきは「人生を決めること」ではない

ここでよくある誤解がある。

1年生のうちに、人生の最終目標まで決めなければいけない、という考えだ。

それは違う。

今やるべきなのは、

  • 自分はどの方向に進みそうか
  • どの選択肢を今のうちに残しておくべきか

を仮でいいから決めることだ。

仮説を立てて、少し動いてみて、違えば修正する。このサイクルを早く回し始めた人ほど、後で大きく迷わなくなる。

「まだ早い」は、思考停止の言い訳になる

「まだ1年生だから」「そのうち考える」。この言葉は便利だが、危険でもある。

考えることを先送りにするほど、考える余裕は確実に減っていく。

2年生になれば実習が増える。3年生では専門科目が本格化する。忙しさは増え、考える時間は確実に削られる。

考える時間が一番あるのが1年生という事実は、意外と見落とされがちだ。

1年の終わりに問うべきたった一つのこと

1年生が終わるとき、テストの点数や順位よりも、次の問いを自分に投げてほしい。

「自分は、この1年で一度でも将来について考えただろうか」

完璧な答えは必要ない。だが、考えたかどうかは重要だ。

この章で伝えたいのは、

1年生で完璧を目指すな。だが、思考停止だけはするな。

それができたかどうかで、この先の選択肢の幅は確実に変わる。

ここから実際に「人生設計」を始めるための補足

ここまで読んで、「考えることが大事なのは分かった。でも何から考えればいいのか分からない」と感じた人もいるはずだ。それはごく普通の反応だし、むしろ真面目に受け取っている証拠でもある。

まず理解してほしいのは、人生設計は最初から完成形を描く作業ではないということだ。多くの人がここでつまずく。「将来の目標を決めろ」と言われると、立派で一貫したストーリーを作らなければいけない気がして、思考が止まる。

だが実際は逆だ。

1年生の段階で必要なのは、

  • 正解の将来像
  • ブレない最終ゴール

ではない。

必要なのは、雑でもいいから「今の仮説」を言葉にすることだ。

例えば、こんなレベルで十分だ。

  • なんとなく技術職の方が向いていそう
  • 人と話すより、物を作っている方が楽しい気がする
  • インフラ系は安定していそうだが、実際どうなんだろう
  • ここには一貫性も、根拠もいらない。大事なのは「考えた形跡」を残すことだ。

この仮説を持った状態で授業を受けると、見える景色が変わる。

「あ、この内容は将来使うかもしれない」 「これは今の仮説とは違う方向だな」

こうした引っかかりが、次の判断材料になる。

人生設計は「頭の中」ではなく「外に出す」

もう一つ重要な点がある。

人生設計を、頭の中だけで完結させようとしないことだ。

考えは、言葉にした瞬間に初めて形になる。ノートでも、スマホのメモでも、何でもいいから書き出してみてほしい。

  • 今気になっている分野
  • 面白そうだと思った授業
  • 逆に、強い違和感を覚えた内容

これらを断片的に並べるだけでもいい。整理する必要はない。

可能であれば、それを誰かに話してみる。友人、先輩、先生、家族。相手は誰でもいい。

最近であれば、AIを使って壁打ちするのも一つの手だ。自分の考えを文章にして投げるだけでも、思考の粗さや前提の抜けに気づける。

ただし、AIに答えを決めてもらう必要はない。あくまで整理の補助として使い、最後に決めるのは自分だ。

他人やAIに説明しようとした瞬間、自分がどこを分かっていないのか、どこが曖昧なのかが浮き彫りになる。

「決める」とは、固定することではない

ここで一つ、誤解を解いておきたい。

この記事で言っている「決める」とは、将来を固定することではない。

今の自分は、こう考えていると、一度区切りをつけることだ。

決めた後に変えるのは、逃げでもブレでもない。むしろ健全だ。仮説が間違っていたと気づけたなら、それは前進している証拠でもある。

問題なのは、決めないこと。判断を先送りにして、環境や流れに選ばされることだ。

1年生の終わりまでに、次の3つだけはやってほしい。

  1. 自分なりの「仮の方向性」を言葉にする
  2. それを誰か一人(友人・先輩・先生・AIでもいい)に説明してみる
  3. 次の学年で何を確かめるかを一つ決める

完璧である必要はない。むしろ未完成でいい。ここで大事なのは、考えた痕跡を残すことだ。

この章で一貫して伝えたかったのは、

考え始めたかどうかが、すべての分岐点になるということだ。

この先の章では、2〜3年生になると、なぜこの「考える余裕」が一気に削られていくのか、そしてその中でどう判断していくべきかを、さらに具体的に書いていく。

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